今から、数年前になりますが、弁護士会、司法書士会や福祉関係者、労働団体等、多くの皆さんが協力して実施した「反貧困全国キャラバンin千葉」に参加しました。主要駅等での街宣行動、県内3ヶ所での学習会、シンポジウム、駅前相談会、パレード等が展開されました。
そのひとつの学習会の中で路上生活者を支援している団体代表者の講演で、初めて「関係性の貧困」という言葉に出会いました。それは、路上生活者を支援し住む場所を確保しても路上生活に戻っていく人もいる。路上には仲間がいるから。とのことだったと思います。何か、ずーと胸につかえていたものが何なのか見えた気がしました。
田舎から出てきて千葉の企業に勤め小さな職場で労働組合の役員となり労働運動に取り組んできました。職場での活動は、職場の仲間の悩みや苦情等を聞き、課題の解決に向けて一緒になって行動する、いわば組合員の世話活動が私の運動の原点でした。なぜ、労働組合に関わったか。千葉県に来て間もない頃に自分自身が孤立を感じ、殻をつくりさらに自ら孤立を深めていくという負のスパイラルに陥った時期がありました。そのときに殻を優しく叩き声をかけてくれたのが労働組合の皆さんであったことです。大変感謝しています。これをきっかけに労働組合に関わっていきますが、当時は、まさに「関係性の貧困」を自ら作っていたのだと思います。キャラバンでの学習会で、改めて「関係性」の大切さについて感じたことを思い出したところです。
さて、今の社会の現状はどうなっているでしょうか。無縁社会とも呼ばれ、孤独死・孤立死の報道が多々されています。経済的な貧困は依然高い水準で推移し、貧困の連鎖や、老後破産、老後崩壊等も懸念されています。一方、児童虐待、高齢者虐待等々が深刻化し老老介護の実態等、不安は募るばかりです。パワーハラスメント、長時間や過重労働によるメンタルヘルス不調、過労死・過労自殺等の労働問題も継続しています。これらには多くの背景や要因があると思いますが、そのひとつに、地域や、家庭、職場をはじめ、多くの場面で関係性の希薄があるのではないでしょうか。
今、「関係性の再生」「関係性の再構築」が社会にとって大切な取り組みのひとつだと思います。様々な状況があり難しさはありますが、その背景にあるものをしっかりと見つめ、一歩一歩取り組みを進めていくことが必要だと思います。地域での居場所づくりや地域での縁側づくり等、地域でのコミュニティ再生の取り組みが進められています。また、個々人の悩みや思い等の話を聴く、そして一緒になって解決の道を考え歩む。そうした相談支援窓口もできています。「よりそいホットライン」もその大事なひとつです。それぞれの取り組みがさらに充実強化されなければなりません。そのためには、行政を含め多様な団体等とのネットワークが重要です。団体間の関係性も重要です。団体間が「関係性の貧困」に陥らないよう、また新たな「関係性を構築」していくことも忘れてはならないものだと思います。
ひと・くらしサポートネットちばでは、相談者の引越支援、「一刻荘」の当番や片付け等の限られた取り組みへの参加でしかなく恐縮していますが、「一刻荘」で入居された方同士や支援者との間で少なからず失われていた関係性が築かれてきたことを学ばせて頂きました。会議や活動等を通しながらそれぞれの団体の皆さんを知り、取り組みや思いを知る。また、知って頂く等、個人間とともに団体間の関係性が築かれていることに感謝しています。
いま、私たち千葉県労働者福祉協議会では「暮らし何でも相談」や生活困窮者自立相談支援等を行っていますが、相談者が置かれている関係性にも十分留意し、多くの皆さんとの関係性を大切に、連携しながら取り組んで行きたいと思っているところです。
■執筆者:小栁光廣(千葉県労働者福祉協議会)
1954年新潟県で農家の三男として生まれる。
1973年に就職し千葉県にある事業所に配属。以後、2011年10月まで企業に在籍するとともに労度運動に携わる。2011年11月より千葉県労働者福祉協議会に勤務し今日まで労働者福祉運動を推進。
この間には、市民の皆さんとともに子育て支援のNPOを結成したり、暮らし何でも相談「ちばライフサポートセンター」を立ち上げたり、また、ひと・くらしサポートネットちば、フードバンクちばをはじめ、市民団体や、消費者団体等に参加し社会的な取り組みを進めている。
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